愛の果実-エリートなあなた短編集-
イライラしながらビールを飲んでいると、彼女の高らかな声色での鼻歌まで思い出してしまった。
「ああっ、うっさいわ!」
「なにがー?」
そう言ってキッチンから顔を覗かせたのは、我が家のテキトー男である。
寝転んで悪態をついていた時、いい匂いが鼻腔を突き抜けた。再び、くんくんと嗅ぐとは犬と同じだ。
コトン、とダイニングテーブルへ皿を置く音が鳴る。その刹那、屈んで私の顔をのぞき込んでくる男。
「出来たよ、お姉さま」
「……うん」
そこで飲みかけの缶ビールを持って立ち上がると、椅子を引いて席に着く。
「はー、お腹減った!おいしそー」
大皿には湯気の立つチンジャオロースーが、食欲を増す照りと香りを放っている。