愛の果実-エリートなあなた短編集-
早速「いただきます!」と手を合わせたあと箸を持つと、小皿へ取り分ける。
熱々のそれを口に放り込んで租借すると、牛肉にピーマンと筍の食感がバランス良い。
向かいの席に座ってこちらを見ている男に、指でグッ!とサインを送った。
――作れないクセにジャッジメント役とは、良い身分だなと密かには思っている。
「また食べてくれるかな?」
「いいともー」
でも、バカなやり取りをし終えたところで、その男こと哲は食べ始めた。
研究者だからなのか、それとも器用なのか。とにかく何を作っても、美味い。
今日のチンジャオロースーも、レトルト不使用なのに素晴らしく絶品だ。
すっかり世間に浸透した料理男子と言えるくらい、哲の腕は確かだと思う。
こうしてメインの他には、白米とお味噌汁と漬け物。飲み物はもちろんビールがお決まり。
暫くすると大皿にたっぷりあった料理を2人で綺麗に平らげた。
美味しかったからつい食べすぎた私は、さすがに苦しくてお腹をさすってしまう。