愛の果実-エリートなあなた短編集-
満腹でも構わずに缶ビールを飲む私を、向かいの男は穏やかな顔で見てくる。
こうして向き合うのは、互いの仕事が21時までに終わった日に限られている。
「なによ?」
「んー」
大学からの付き合いだし、お互いに年取ったなと思うけど。哲は何というか、……男らしくなった気がする。
「お姉さま、明日があるさ」
「……そうね」
昔からいつも私が苛立っている間は、放っておいてくれた。
そのあとも絶対に慰めたりしない。もちろん、私も甘えるわけないけど。
だからこそ、絶妙なタイミングでのひと言が、胸にグッとくるのよね。
嫌なことはリセットして、明日またトライしようと思わせてくれるから……。
「ねえ、真帆ちゃんたち、シカゴで楽しんでるかしら?」
「当然ジャン。修ちゃん大張り切りでしょー。
たっぷりエロいことしてる筈だしー。俺たちも負けられないよ?」
ニヤリとご機嫌に笑う哲を前に、プッと大きく吹き出してしまった。