春•夏•秋•冬の彼等
麻冬が
「え?」と聞き返すと同時に教室のドアが勢い良く開いて夏実が入ってきた。


「おまたせっ!」


4人分のジュースを抱えながら楽しそうに走ってくる。

そして一本一本渡していった。


「あーっ!夏実の美味しそう!」
「いーしょいーしょ?!新発売なのー!」


春樹は夏実の持っているジュースを見て叫んだ。

新発売に弱い2人。


「てか俺のはー?」


まだジュースを渡されてない春樹はブーブー文句を言う。

夏実はニッと笑って後ろからジャーン!とジュースを出した。


「わ、やった!」


春樹のも夏実と同じく新発売したジュースだった。

夏実は春樹が自分と好みが似ているのを知った上で、頼まれてたオレンジをやめて新発売のジュースにしたのだ。


「さっすが夏実ー」


語尾にハートを付けて、春樹は嬉しそうに喜んだ。


「あたしと春樹の好み一緒だから絶対こっちだなーって思ったの」
「覚えててくれたんだ?」
「あったりまえー。あたしが春樹を忘れるわけないじゃん」


ニコッと元気に言う夏実。

太陽の陽が当たって一層夏実が眩しく見える。

春樹はそんな夏実を愛しそうに見上げた。

嬉しくて仕方なかったのだろう。

そんな春樹を秋人は何かを考えているかのような顔で見た。


「あんたらがいるとほんと騒がしいわ」


麻冬は呆れたように言った。


「へへ、そう?」


春樹が夏実を好きになったのは、もうずっとずーっと前。

高校に上がるより前の、中1のときの話。


小学生のときからバドミントンをやっていた春樹は当然上手くて、中学入って即レギュラーに抜擢された。


もちろんそれを良く思わない人もいた。

ある中学との練習試合、団体戦で挑んだとき勝ったのは春樹だけだった。

レギュラーの先輩たちはそんな春樹を完全に嫌っていて、その日は春樹だけが勝てたことで余計に腹を立てて試合後の体育館でストレッチをやっていたとき、公然と春樹に攻めよったのだ。


心温かいベンチの先輩たちや同級生は片付けをしていて、部長と副部長はあいさつに行っていたから助けてくれる人なんていなかった。


『てめーまじで調子乗ってんじゃねぇぞ』
『今日勝ったのだってまぐれだっつーの』


先輩に口答えできるはずもなく、春樹は黙ってストレッチしながら聞き流す。

そんな春樹の態度に腹を建てた先輩がラケットで春樹を叩いた。


『いっ…』


まだ3年も引退していなく、強豪校のため部員も多くいる中で数少ない団体戦のメンバーに選ばれたのだから、多少の嫌がらせは仕方ないと春樹も思っていた。


『…先輩っ!いい加減にしてください!俺が何したって言うんですか!』


だけどその日は珍しく春樹も反撃した。
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