夏の月夜と狐のいろ。
シアンは空を見上げた。
月が高く上っていて、秋の風のような真夜中の涼しい風が頬を撫でている。
ここはどこだろう。
シアンとクロはただひたすらに走り、ラシッドたちの研究所から十分な距離まで来て足を止めた。
長く走ったせいで体中が疲れで悲鳴をあげ、怪我も、ずきずきと痛む。
横をちらりとみると息を切らして苦しそうにするクロがいて、シアンの視線に気がつくとそのオッドアイをこちらに向けた。
「これからどうするんだ?」
クロは低い声で言う。
シアンはため息をついてきょろきょろと辺りを見渡した。
一面に褐色の砂漠が広がっていて、風に舞い上がった砂ぼこりであたりはうっすらもやがかかっている。
「わからない・・・。休めるところがあればいいんだけど」
シアンはちらっとノエルを見た。
本当に、ノエルは私の森を燃やした人間の仲間なの・・・?
そんな思いが浮かび上がる。
けれどシアンは頭を振ってその考えを頭の隅に追いやった。今はそんなこと考えている場合じゃない。
「もうすこし進んでみよう。」
シアンはゆっくり歩を進めた。