夏の月夜と狐のいろ。
「・・・!」
青年は驚いて漆黒の瞳を見開いた。
その視線は、シアンの頭の上にある獣のそれに据えられている。
そして、青年はすぐにもとの表情に戻ったかと思うと、窓際で一瞬、月を見上げた。
そして、振り向くと少し口元を微笑ませて言う。
「なら、俺も教える。俺も人間じゃない。俺は狼だ。」
窓からのぞく月を背景に、青年は笑う。
その頭には銀色の耳が現れ、腰の辺りには立派な尻尾がのぞいた。
微笑む口元からは、鋭い牙ものぞいている。
長い髪が、さらさらとなびき、月の光で白銀に輝いた。
その雰囲気は、どこかお父様と似ていた。
「俺の名前はウルーだ。お前らは?」
ウルーと名乗った青年は、どこか寂しそうな顔でそう言った。