夏の月夜と狐のいろ。
シアン達が狐の墓場になっている場所に行くと、そこは少しだけ花が咲いていた。
紫色の花が揺れて、墓場を縁取っている。
よかった。ここはあまり燃えなかったみたい。
森の最深部であるここは、あまり火が回らなかったようで少し煤をかぶっている程度で、綺麗だった。
ここには、お母様も眠っている。
「燃えてないみたいだね。さ、埋めてあげよう。」
シアンがぼうっと物思いにふけっているとノエルがぽんっと頭に触れてきた。
シアンはこくんと頷くと墓場に足を踏み入れた。
不思議な、場所だ。
ここだけが別世界のようで、甘い香りが漂っている。
クロに穴を掘ってもらって、母狐たちをみんな一緒のところに埋めてあげた。
シアンは空を見上げて、ぽっかりと開いた木のあいだから森の外を見つめて、昔のことを思い出しながら誓った。
「必ずみんな一緒に、ここにまた戻ってくるよ、お母様・・・」