夏の月夜と狐のいろ。


『クロさんはノエルさんのことも嫌いなんでしょうかね…?』


リリィが耳元でそっと囁いた。
横のノエルにはきこえない、小さな声だ。


シアンは曖昧に視線をめぐらせ、返事をしなかった。


そんなこと、信じたくない。


せっかくリリィもノエルのことを認めてくれたのにクロだけがノエルを敵だと思っているなんて嫌だ。



シアンは会話を変えようと全員にきこえるよう大きな声で話題をふった。


「ね、ねぇリリィ。いつのまに身体から電気なんて出せるようになったの?」


シアンが話題を変えようとしていることに気がついたらしく、リリィがぴくっと耳を動かす。

そして、自慢げに尻尾をふわりとたてた。



『私は、シアン様をさらわれてから昔にティアドール様に習ったことを思い返しました。

シアン様に千里眼があるように、私にも電気狐になる才があると教えていただいたんです

最もシアン様の能力は九尾狐としてのものですけど!』



シアンは驚いて目を見開いた。

長い間一緒にいたけれど、気がつかなかった。


リリィにそんな才能があったなんて。


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