夏の月夜と狐のいろ。
門の前には、検問が行われているらしく、人が何人か居るのが見えた。
「おかしいな。この町は検問なんて普段はしてないはずなんだけど・・・」
ノエルが不思議そうな、疑うような声で言った。
警戒しているらしい。
「なにかあったのかもしれないね」
シアンはそれに、そう答えた。
まだ検問の人間たちはこちらに気づいていない。
シアンはきょろきょろと周囲を見渡して、隠れる場所がないか探した。
もしかしたら、私たちみたいな"人間ではないモノ"を見張っているのかもしれない。
そうだとしたら、リリィやクロが、自分自身が危ない。
幸い町に近づくにつれて木々が植えられていたので、隠れる場所が見つかった。
あそこに隠れて、とりあえず様子を見るのがいいかも。
シアンが他のみんなにちらっと合図を送ると、賛成だと言うようにみんな頷いた。
「じゃあー・・・」
シアンがそこまで言いかけたところで、後ろから声が聞こえた。
「おい、お前ら!そんなところで何をしている!こっちへ来い!」