夏の月夜と狐のいろ。
振り向くと、検問のために立っていた人間たちがこちらに向かって怒鳴っていた。
いつの間に気づかれたのか、人間たちは何人かで集まっている。
どうしよう・・・!
シアン達は、その場で立ちすくんだ。
リリィが心配そうにちらりとこちらをのぞく。
シアンの正体はローブを脱がされればすぐにばれてしまうだろう。
そうなれば一緒にいたということでノエルたちまでもが危険に晒される。
特に、ノエルはこの町に住んでいて、それでいて魔術師として暮らしていたのだからばれるときっと困るはずだ。
動かないシアンたちに痺れを切らしたように人間たちが歩み寄ってきた。
『私が感電させますよ』
リリィが、ぐっと身体に力を入れたのがわかった。
「だめだ、お前の電流は目立つだろう!仲間を呼ぶことになるぞ!」
けれどすぐにクロが鋭く耳打ちし、リリィはしぶしぶ体の力を抜いた。
その間にも、人間はどんどん、近づいてくる。