夏の月夜と狐のいろ。
「シアン・・・?」
寝ぼけたノエルが、そう呟いた。
そしてノエルの藍色の瞳は、すぐに驚いたそれにかわる。
「えっ・・・?シアン、いいの?」
ノエルは驚いたようにそういって、シアンを見つめた。
シアンは喜びと緊張で自分のしっぽがぶわっとふくらむのを感じた。
けれど、シアンはにこりと微笑んでみせた。
「うん、いいの・・・!ずっと、こうやってお話ししたかった!」
シアンがそう言うと、ノエルは嬉しそうに微笑んで
「俺もだよ」というと頭をなでてくれた。
はじめて触れる、人間の手は自分たちと同じように温かい。
シアンのしっぽがばさばさと揺れると、ノエルはめずらしそうに
シアンのしっぽをながめた。
「綺麗なしっぽだね。やっぱり狐なんだ?」
ノエルはそういって笑う。
ここは人間たちにはルナール・ジャルダン(狐の庭)とよばれているらしい。
だから、狐と思われていたのだろう。
シアンはこくりと頷く。
「うん。私はここの森に住む狐なの」
そういうとやっぱり、とノエルは言った。