夏の月夜と狐のいろ。
キィィィーーーーーーーン・・・
そんな音に、シアンははっと目が覚めた。
その音は、お父様がシアンを呼ぶときに使うものだ。
シアンの九本の尾の下で一緒に寝ていたリリィや
そのほかの狐たちもむくりと頭を起こした。
「なに・・・・?」
眠い目をこすりながらあたりを見渡すと、
何やら森が騒がしかった。
シアンは嫌な予感がして、寝床から飛び起きると
お父様のいるところに向かう。
後ろからさっとリリィも付いてくる。
森を全速力でかけぬけるとすぐに森の中心についた。
そこにはいつもは優雅に座っているお父様が
天に向かって吠え、森じゅうに指示を出しているのが見えた。
『人間が森に攻めてくるぞ・・・!!
狙いは私とシアンだ・・・!化けられる狐たちはみな、鳥に化けて空へにげろ!!』
お父様の瞳は濃い青色になっていた。
どうやら千里眼の力で遠くの景色を見ているらしい。
はじめ、ノエルが遊びに来ただけなのではないかと思ったが
このお父様の感じから違うことがわかった。