夏の月夜と狐のいろ。
のどかな森の中。
一人の少女が輝く銀色の髪をゆらしながら
木の上でとびはねて、くるくる回っていた。
下から、声がきこえる。
「シアン様!!あぶないですよ!
それにその姿になるとお父様に怒られるのではなかったのですか!」
シアンと呼ばれた私は、下を見る。
そこには心配そうにこっちを見つめる狐の姿があった。
「大丈夫よリリィ!あぶなくなんてないわ!慣れてるもの!
それに人間に見られなければ大丈夫よ!」
シアンはくるりとまわって木から飛び降りると、
たたっと走って森の中の湖にむかう。
後ろからリリィがあわててついてくる。
もう。リリィは心配性だな。
リリィはこの森の主の、天狐であるティアドールに
シアンの世話を頼まれている狐だ。
そして、ティアドールは、シアンの父だ。