夏の月夜と狐のいろ。
シアンはきちんと着地すると、すぐに顔をあげて
お父様のいる方角を見た。
思ったよりも遠く離れてしまったらしく、
ここからはお父様の姿はもう見えない。
シアンはさっとあたりに首をめぐらせまわりを確認し
耳をそばだててみた。
けれどまだ、人間の声は聞こえない。
シアンはすぅっと一度、目を閉じた。
次に目を開いたとき、シアンの瞳は
薄い青色から、濃い青色へと色を変えていた。
お父様のように、力が強くはないので
シアンは自分が触れたことのあるものを媒体にしてでしか
千里眼をつかうことはできない。
それでも、今のシアンには十分だ。
森の木々すべてにはふれたことがあるので
森の中ではすべての景色がどこにいても見ることができる。
シアンはティアドールに意識を集中させた。
あたりにお父様の見る景色がひろがった。