夏の月夜と狐のいろ。
「おとう、さま・・・」
シアンはその場にふらりとしりもちをついた。
千里眼はひどく体力を消耗するのだ。
シアンはそれでも、何度も何度もお父様に千里眼をつなげようとした。
けれども、人間が何かしたのだろうか、それとも
お父様の意識が失われたのか、千里眼の景色がうかぶことはなかった。
シアンの心臓が波打つ。
こんなことになったのは、人間と仲良くした私のせい?
ノエルも本当はこんな人間なの?
本当は私を捕まえようとして仲良くしていたの―・・・?
シアンの頭にいろいろなことが浮かんだ。
ノエルもあの中にいるのだろうかと千里眼をつなげようとしたけれど
もう体力が残っていなかったらしい。
シアンは最後の力をふりしぼって人間に化けると、
フードをかぶってくらくらする頭をかかえその場に横たわった。
ごめんなさい、お父様―・・・・
もう、動けないみたい。