夏の月夜と狐のいろ。
リン………
リリン…
遠くから小さなすみわたった音がきこえた。
シアンは、ゆっくりと目を開く。
そこは、自分たちの住む森によく似ているが
どこか現実味がなくて全体に白く光っている。
シアンは体を起こす。
あんなにも疲労していたはずが、体は軽かった。
その時、突然視線を感じ、シアンはばっと
立ち上がって体をこわばらせた。
人間の姿の自分はお父様にわたされたローブ持ち
森の向こうに目を凝らした。
「…!!」
その先には、輝く白い狐がいた。
自分たち銀色のあたりを反射するような白銀の毛とは違い
まわりにとけこみそうな、そんな白だ。
浮世離れしたその姿は、この世のものとは思えない。
「だれ……??」
シアンが、訊ねるとその白狐は
利口そうな瑠璃色の瞳を光らせた。
『これは災いよ。あなたが光となって、祓うの』
シアンは首を傾げる。
「どういう意味??祓うって、どうすれば………」
そこまで訊ねたところで
輝く森と景色がぐにゃりと歪んだ。
「待って!!!わかんないよ!!!!」
シアンの叫びも虚しく、その"夢"は崩れた。