夏の月夜と狐のいろ。
「そんなっ……!!」
シアンはその光景に呆然とした。
小さい頃よく遊んだ木のそば。
お父様がいつもいる木々のまわりの茂み。
そして、シアンがノエルと待ち合わせた木。
すべてが、燃えていた。
ごうごうと音をたててすべてが燃え、赤色が広がった。
そのまわりに人間の影があり、その人間たちは
本をかかえ、歓喜に満ちた声をあげている。
シアンの中に熱い何かがひろがった。
それは、喉元まで上がってくる。
気がつくとシアンは叫んでいた。
「でていけ!!愚かな人間ども!!!ここは私たちの森よ!!!」
人間は、振り向いてそれからシアンをみて
さらに勝ち誇った顔をした。
シアンはあふれだす怒りで冷静な判断などどきずに
人間の群れにつっこんでいった。