夏の月夜と狐のいろ。
しかし次の瞬間、鋭い音があたりにとどろき、
腹部に鈍い痛みがはしった。
自然のなかで長く生きてきた自分が、
まだ味わったことのない、知らない痛み。
目の前がゆらゆら揺れて、シアンはその場に膝をついた。
「あ………ぅ……」
溢れだした血が、ぬるりとシアンの手と、
お父様にもらったローブを汚す。
昔、仲間が死んだときのことを思い出した 。
お父様が悪い奴らー…人間に"猟銃"というもので
殺されたのだときいた。
(私も死んじゃうのね)
シアンは、今にも気絶しようとする頭で
そんなことを考えていた。
ついにシアンはふらりと前のめりに傾く。
霞む視界に、歓喜に狂う人間の姿とー…
呆然と涙を流す少年がうつる。
藍色の髪の、少年。
知っていたはずのその少年が、最後にうつって
そしてシアンはどさりと倒れた。