夏の月夜と狐のいろ。
首に重みを感じながら、シアンはゆっくり目を開いた。
だが、あたりは薄暗く目を開いてみても
ほとんど何も見えなかった。
動くたびにジャラ、と金属的な音と
首と足にこすれる痛みを感じた。
目線をおろすと首には大きな首輪がついていて、
足には鉄の足枷がついている。
「なにこれ…?」
シアンは、小さく呟いた。
すると、その呟きに答えるように少しかすれた
小さな声がきこえた。
「ここは物見小屋だよ。異端の生き物をあつめて
みせものにしたりするところなんだって。」
はっとシアンが声のしたほうを向くと
こちらをみる疲れきった茶色っぽい琥珀色の瞳があった。
だんだん目がなれて、景色がみえはじめた。
どうやら自分は牢屋にいれられているらしく
声の主は隣の牢屋にいるらしい。
そこにいたのは、茶色い長い髪の少女だった。
少女も同じように首に鎖をつけられていて
シアンよりもぼろぼろだった。
そして、その少女の頭には茶色い耳が鎮座していて
腰のあたりからは獣のものと思われる尻尾がある。
「……あなたも、人間に化けてるの?」
シアンは、そう訊いた。
だが、少女は首を振った。