夏の月夜と狐のいろ。
そのまましばらくリリィを撫でながらぼぅっとしていると
リリィはすやすや寝てしまった。
黒い毛が風にふわふわ揺れて、気持ちよさそうに寝息をたてている。
「チャ~ンス・・・」
小さな声でシアンはそう呟いた。
いつもはリリィが傍で見張っていて、森の内側から
向こうへは行かせてくれない。
さすがのシアンも森の外までは出ようとは思わないが、
森の出口の近くに行ってみたかった。
シアンはそっと足を忍ばせ、リリィの傍を離れる。
よし、気づいてない!
シアンは木の上にのぼると、ぴょんぴょんとびはねて
ぐんぐん森の外側に近づいた。
「わあ・・・!!」
しばらく進むと、視界がすっと開けた。
そこには、見たことがない景色が広がっている。
この森は高台にあるらしく、森の一番外側の木に腰掛けると
下のほうには人間のすむ町といわれるものらしいものが見えた。