夏の月夜と狐のいろ。
少女の瞳がにごり、真っ赤に染まる。
シアンは荒い息をはきながらガタガタと震えて膝まずいた。
「はっ………はっ、う…あ…」
シアンは恐怖と混乱で震える体をおさえ
小さくうずくまっていた。
あれは、なに?
シアンの頭のなかに助けをもとめる少女の姿がよみがえる。
恐怖にゆれるそれはこの前のツキの瞳によく似ていた。
「あれがここで行われていることだ。
わかるか?そして僕たちだけが特別だ。」
シアンは急にきこえた声にびくっとして
ふりむいた。
焦点が、うまくあわない。
黒髪がゆれ、オッドアイが冷たくシアンを見つめる。
「だがな、僕たちはもっと悲惨だ。お前もそのうちわかる。」
そういうとクロは向こうへ行ってしまった。
視界がぐらりと歪む。
シアンはそのまま意識を手放した。