夏の月夜と狐のいろ。
「…ん………」
シアンはゆっくり、目を開けた。
ここはどこだろう。
体を起こしてあたりを見渡すと
そこは小さな部屋だった。
確か、シアンにあたえられた図書室の部屋だ。
けれど、いつの日かのように
あたりがうっすらとちらちら光っている。
森でみた白い狐を思い出した。
無意識にきょろきょろとその姿を探すが
いっこうにその姿は見えなかった。
諦めて再び目を閉じたそのとき、
頭に直接語りかけてくるような声が響く。
「あなたは彼を忘れちゃだめよ。
絶対に、あなたに味方してくれるわ…」
意識が、ぼんやりする。
目が覚めてしまうようだ。
返事をすることもできず
シアンはっと夢から覚めた。