夏の月夜と狐のいろ。
すごいな・・・!
シアンはしばらくそんな思いに浸っていた。
お父様は人間に見つかったらどうするんだ、というけれど
こんなに遠いのだから、絶対大丈夫だと思った。
けれど、そんな考えはすぐ打ち破られた。
それは、視界のすみっこに人影がうつったからだ。
シアンはびくりと体をすくませた。
そしてすぐに木からおりると、近くの草むらに身をしのばせた。
心臓がドクドクと音をたてて体中を血がかけめぐる。
でも、体は緊張でふるえているのに
心はこれまでにないほどにわくわくしていた。
あれが人間なのね!
しばらくそこで身をひそめていると、
その人間が森に踏み入ってきた。
その人間は少年らしい。
シアンが化けた姿よりも少し年上にみえる。
人間はきょろきょろしながら森を進み、
シアンの目の前を通り過ぎていった。
シアンはばれないように、こっそりとあとを追うことにした。