夏の月夜と狐のいろ。
シアンはその場にぺたりと座り込んだ。
恐怖で肩がガタガタと震えている。
だから、部屋に誰かが入ってくる物音にも気がつかなかった。
「友達、が死んだのか?」
突然すぐそばで声がしてシアンはびくりと身をすくませて
声のしたほうを見上げた。
真っ暗な部屋に光る、赤と青のオッドアイ。
「ク・・・ロ・・・」
そこにいたのはクロだった。
クロのその瞳はいつものように憎悪に満ちている。
けれどその奥に一瞬、哀れみの色が浮かんだ気がした。
それは、いつもクロがシアンにむけてくる
悲しそうな色だ。
いつもならためらうところだが、
余裕がなかったシアンの口からはいつも疑問に
思っていたことがすらすらとこぼれだした。
「クロも、昔にこんなふうに
何かされていたの?」
シアンがそうたずねた瞬間、
クロの瞳の憎悪の色が濃くなった。
赤い瞳が怒りにゆれる。
「違う。こんな生ぬるいことじゃない。
こんなことになるなら"僕たち"も死んだほうがマシだった。」
クロはそういって血にぬれた外の世界をみつめた。