夏の月夜と狐のいろ。
死んだほうがマシだった?
それはどういうこと?
シアンはじっとクロを見つめた。
クロは何も言わず、外を眺めている。
再びシアンの胸に悲しみがこみあげてきた。
ツキはいない。
ちゃんとしたお別れもいえないままに死んでしまった。
「ツキ・・・」
シアンが再び涙を流し始めると
クロがゆっくりとこちらを向く。
クロの目は再び哀れみに満ちたものになっていた。
「泣くな。泣いても仕方がないだろ。
それに死んだとは限らない。」
クロはそう言って本棚にもたれかかるようにして
シアンの横に座った。
黒い髪が月明かりに反射してきらりと輝く。
シアンはあふれる涙をこらえながら
なんとかクロのほうをみた。
クロの瞳は、真剣な表情をうかべていた。