夏の月夜と狐のいろ。
クロはシアンと目があうと、さっと視線をそらした。
そして、唸るような声で言う。
「僕はここからお前を逃がしたい。
ここに居ると"僕たち"よりひどいことになるかもしれない。」
シアンは驚いて目を見開いた。
「それってどういうこと?僕たち、って
クロと、誰のことなの?」
シアンが矢次に質問すると
クロはため息をついてそれを手で制した。
「一度にきくな・・・。大体、今のお前に
言ったってわからないかもしれない。」
クロは考え込むようなしぐさをして
すぐにそれをやめた。
そして真剣な顔でこっちをみつめる。
わずかに浮かぶ怒りの色。
クロはいったい何に対して怒っているの?
その質問をしはじめる前に、クロが口を開いた。
「まず僕たち・・・僕と、シロは普通の人間ではない。」