夏の月夜と狐のいろ。



クロはシアンと目があうと、さっと視線をそらした。


そして、唸るような声で言う。


「僕はここからお前を逃がしたい。
ここに居ると"僕たち"よりひどいことになるかもしれない。」



シアンは驚いて目を見開いた。


「それってどういうこと?僕たち、って
クロと、誰のことなの?」



シアンが矢次に質問すると
クロはため息をついてそれを手で制した。



「一度にきくな・・・。大体、今のお前に
言ったってわからないかもしれない。」



クロは考え込むようなしぐさをして
すぐにそれをやめた。


そして真剣な顔でこっちをみつめる。


わずかに浮かぶ怒りの色。



クロはいったい何に対して怒っているの?



その質問をしはじめる前に、クロが口を開いた。



「まず僕たち・・・僕と、シロは普通の人間ではない。」


< 62 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop