夏の月夜と狐のいろ。
「そしてラシッドは最後に、自分の言うことを完全にこなすように
改ざんして、僕たちの"人格"をクローンにうつすように準備した。
どうやら、感情やらが残っているほうが能力が役にたつらしい。」
クロは口をつぐんだ。
いつの間にか隠すのをやめた赤いほうの瞳が怒りにもえあがり
肩が小刻みにふるえていた。
シアンは不安になってクロをみつめる。
これ以上、話たくないの?
けれどクロはしばらくすると再び話し始めた。
「そこで、僕たちのもとの肉体が死んだ。
そして、シロの人格もうつすのに失敗して消えた。」
空気が、重くなった。
クロはうつむいたままこちらを向かず
ぽそりとぎりぎり聞き取れるくらいの声で言う。
「僕とシロは、双子だった。」
クロの瞳がきらりと揺れた。