夏の月夜と狐のいろ。
あれから少したった。
人間は途方にくれたようにその場に座り込んでしまった。


どうしたのかしら・・・?


シアンは物陰から人間をじっと見つめる。

藍色に近い黒髪に、色白の少年だ。


瞳もまた、藍色をしている。


綺麗な色だけど、その瞳は今途方にくれたようにうるんでいる。


「迷ったな・・・」


そしてぽつりと、そんなことを呟いた。

とたんにシアンは今の状況を理解する。


この人間は、道に迷って出られなくなったらしい。


シアンは少しわくわくして思わずしっぽを動かす。


九本の尾がぱさりと思い思いに揺れる。



シアンの頭の中にはひとつの考えが浮かんでいた。



声をかけて、出口まで案内してあげたい―・・・



そんな、考えだった。

ばれればお父様に、怒られるだろけど。



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