夏の月夜と狐のいろ。
「ひっ・・・!」
シアンの喉が、かわいた音をたてて悲鳴をあげた。
それは、きっとクロが言っていた"いれもの"だ。
シアンはぞっとして途端に再び抵抗をはじめた。
―いや!死にたくない!
「離して!!やめて!!!」
シアンは叫びながらもがいた。
拘束具がこすれ、手首と足首にやけるような痛みがはしる。
だがラシッドは気にしないようにシアンにかぶせているヘルメットに触れて
何かのボタンを押し始めた。
あせるシアンは、暴れた。
嫌だ、嫌だ、嫌だ・・・!
「大丈夫。安心しな。お前が怯えている人格の移動はまださ。
今からお前の容姿と能力の情報をコピーさせてもらうだけだ。」
ラシッドはにやりと笑う。
「そう、ほえるな。すこし激痛がはしるだけだ・・・死ねないさ」
首筋を、汗が伝う。
次の瞬間、脳から全身に激痛がはしった。
「いやああああああああ!!!!」
体が焼け焦げるような衝撃に、視界が真っ暗になった。