夏の月夜と狐のいろ。
『私はもう、二度とあんたなんて見たくない…』
そう吐き捨てると、シアンはくるりとラシッドに背を向けた。
尻尾の中では、疲れきってぐったりするノエルがいる。
早く治療しないと…!
シアンはすごい勢いで走り出した。
後ろから狼の姿のクロも遅れをとることなく走って付いてくるのが音でわかった。
九尾狐のシアンよりも小さい、普通の狼の大きさだが、クロも走りは得意のようだ。
暗い暗い廊下をぬけて、シアン達はひたすら外をめざした。