夏の月夜と狐のいろ。
過去の夢をみた―・・・
あの日、ノエルは魔術師が集う教会で冷めた目で大人たちを見ていた。
「そんなことして、何になるのかな」
ノエルはあの日、魔術師のその他大勢と、自分の父親にそんな言葉を吐いていた。
大人たちは言ったのだ。
「近々この町に近いあの森を燃やそう。あそこには巨大な天弧狐がいるらしいぞ。おまけにあの森は危険だ。」
それで、ノエルは大人達に反対の言葉を述べていたのだ。
生き物が好きで、植物が好き。
魔術師でありながらノエルはほかの大人たちとは違ってそんな感情を持っていた。
だから、利益のためにあちこち荒らしまわるこいつらが大嫌いだった。
結局大人たちはそれでもこの話をやめなかった。
「もういい」
ノエルは結局そう言い放つと、教会を出て散歩にでかけた。
こんなに空は綺麗で、自然も綺麗なのに。
なんであの大人たちの心はあんなに汚れてるんだ?
そんなことを考えながらしばらく行く当てもなくふらふらしていたが、ノエルはすぐに思い当たって向きをくるりと変えた。
―森に行って見よう。