オレンジどうろ
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「なぁ、三上。委員長って勉強とか性格とか顔とか普通にいいじゃん?」
応援席にいた男子が私に話かけてきた。
わたしの高校初めての友達で、今となっては親友の松本スミレの話題だった。
「ぶっちゃけ、松本って運動神経悪い?」
「なんで?」
「いや、だってよ。運動神経も良かったら委員長って悪いところ何もないじゃん!」
はぁ、バカだなぁ。
私の親友に苦手なものがあるわけないじゃない。
「スミレはすっごく「すーちゃんは」
運動神経いいよ、と続くはずだった言葉を遮ったのはクラス1の変わり者、平田ユウガ。
スミレをすーちゃんと呼ぶのは平田しかいない。
「すーちゃんは、運動神経めちゃくちゃいいよ」
確かにあの運動神経はめちゃくちゃだけど、なんで男の平田が知ってるんだ?
その疑問に追い打ちをかけるように、スミレの走りの特徴も言い当てた。
「すーちゃんの走りには音がないんだよ」
言っていることが分からないというように男子は首を傾げた。
「すーちゃんはね、走る前に自分の世界に入っちゃうんだよ。簡単にいえば、走ることに集中してるの。だから走ってるすーちゃんに話かけても聞こえないし、しかも走ってるときすーちゃん無表情だしっ」
平田は何かを思い出しているのか、クスクス、と可愛らしく笑った。
「委員長って、すげー奴なんだな...」
男子はスタート地点に立って準備をしてるスミレに視線を移した。