オレンジどうろ




***

「なぁ、三上。委員長って勉強とか性格とか顔とか普通にいいじゃん?」


応援席にいた男子が私に話かけてきた。

わたしの高校初めての友達で、今となっては親友の松本スミレの話題だった。


「ぶっちゃけ、松本って運動神経悪い?」

「なんで?」

「いや、だってよ。運動神経も良かったら委員長って悪いところ何もないじゃん!」


はぁ、バカだなぁ。
私の親友に苦手なものがあるわけないじゃない。

「スミレはすっごく「すーちゃんは」

運動神経いいよ、と続くはずだった言葉を遮ったのはクラス1の変わり者、平田ユウガ。

スミレをすーちゃんと呼ぶのは平田しかいない。

「すーちゃんは、運動神経めちゃくちゃいいよ」


確かにあの運動神経はめちゃくちゃだけど、なんで男の平田が知ってるんだ?

その疑問に追い打ちをかけるように、スミレの走りの特徴も言い当てた。


「すーちゃんの走りには音がないんだよ」

言っていることが分からないというように男子は首を傾げた。

「すーちゃんはね、走る前に自分の世界に入っちゃうんだよ。簡単にいえば、走ることに集中してるの。だから走ってるすーちゃんに話かけても聞こえないし、しかも走ってるときすーちゃん無表情だしっ」


平田は何かを思い出しているのか、クスクス、と可愛らしく笑った。

「委員長って、すげー奴なんだな...」

男子はスタート地点に立って準備をしてるスミレに視線を移した。




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