オレンジどうろ




ふぅ、と息を吐いて“1”と書かれた旗の前に座る。

すると何やらバカでかい声が私を呼んだ。

「すーちゃーんっ!お疲れ様ぁーっ!」

プラス、大きく手を振ってくる。

恥ずかしさマックス。


さっき無視してしまったので、とりあえず小さく手を振りかえした。
そしたらエサを貰った犬なみに喜んでいた。

なんか、可愛いなぁ。

と、思ったり。

体育座りした足に顔を埋め、にやける顔を隠した。


「キミ、めっちゃ足速いんだね!」


隣から声がかけられた。さっきの3年生だ。何やら嘘くさい笑顔を向けるその人に私は鳥肌が立った。


「いえ、私なんか...。先輩速くて抜かされそうで怖かったです」

あは、と笑いながら言葉を返した。

「キミなんて名前?」

「松本スミレです」

「スミレちゃんね、俺沢木拓!よろしくなっ」


沢木拓...。

あぁ、クラスの女の子がかっこいいと言ってた人がこの人か。


確かにかっこいいかも、なんて考えながらレースが終わるのを待った。
最初の方に走っちゃうと後を待たなくては聞けないのでヒマなのだが、沢木先輩と話していたらヒマになるヒマがなかった。



***


驚いた。

18クラスあるんだよ。

上級生が本気で勝負してきてるんだよ。

なのに...


『優勝は、1-B!優勝賞品は食堂で1週間無料で食べれるタダ権でーす!』


優勝してしまった。

私と平田くんが中心となり競技に挑んだところ、2位と100点の差をつけて優勝した。



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