オレンジどうろ
『すーちゃん』
夢でよく聞く私を呼ぶ幼い男の子の声が私の頭の中を過った。
「平田くん...助けて...」
なぜか私は平田くんに助けを求める言葉をこぼしていた。
私は恐怖で足まで痺れ始めていて、立つことが出来ずしゃがみ込んでしまった。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。
手足の痺れは体中を駆け巡り、目眩で冷や汗が首を伝い、吐き気がする。
「平田くん、平田くん...」
平田くんのあの笑顔が見たい。
ただただ、沢木先輩が歩く音を耳で感じながら平田くんを呼びつづけた。
その願いが神様が叶えてくれたのかは知らないが、遠くからこちらに走って来ているような足音が増えた。
「すーちゃんっ」
そう私を呼ぶのはたった1人だけで、そして何より今私が求めていた人。
「おい、てめぇスミレに何しやがった...」
私のもとに駆け寄って私の肩を抱いてくれた。
耳元で「大丈夫大丈夫怖くないよ」と私の背中をさすってくれる平田くんの温かさが、私の恐怖を和らげてくれる。
「平田くん...」
私は、そこで意識を手放した。