オレンジどうろ




休み時間


「...で、なぁに?松本さん」


約束通り、ちゃんと来てくれた。というより、迎えに来てくれた。

今私たちがいるのは裏庭。場所を指定したのは田島さんたちだ。私は構わず話し出す。


「今日ずっと何か私に話があるようだから聞こうと思って!」

私は笑顔でいつものような感じで言った。周りから見たらピンチに私は見えるかもしれない。が、私はチャンスだと思っている。

友だちになれるチャンスだと。

友だちが多い方が学校生活は楽しい。そう私は知ってしまった。だからみんなと仲良くするの。


「何か私したかな?」


彼女たちの目を見てはっきりと言う。すると余裕ぶった私が気に入らないのか田島さんが顔色を変え、口を開いた。


「あんたのイイコちゃんアピールいらつくんですけど!あたしらが言いたいのは平田くんに近付くな、それだけよ」


そうとうお怒りなご様子。うーん、と考えた。結果、その願いは叶えられそうにない。なんせ私が彼に近付いているのではなく、彼が私に近寄ってくるのだから。
そして、私は思い出す。

(あ、こんなセリフ漫画の主人公が言われてた)

だいたい漫画でそういう子は、○○くんに近付かないで、の○○くんが好きなんだよな。
そこまで思い出したら現実でもそうなのか、と気になってしまう。失礼かな、と思いながらも意を決して聞いてみる。


「もしかして田島さん、平田くんが好きなの?」

「嫌いだったらこんな必死になってない!」


おぉ。あれは本当だった。

それにしても平田くんってモテるんだなぁ。確かに、運動神経良かったし顔も中の上くらいで柴犬みたいに誠実そうなとこあるし。

いや、そんなこと今どうでもいいんだけどね。





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