いちごきゃんでぃー
第一章
―――――ザワザワ
人ごみの中、あたしは花音の手をひく。
「花音~、あたしあっちの店見てみたぁい!」
「はいはい、行こう行こう」
あたし、斉藤杏は西南高校に通う1年生。
今日は日曜日なので、同じ高校に通う親友の加藤花音とデパートに来ている。
花音は、茶髪のショートヘアーで、凄く顔が整っていて、身長が高くもの凄い美人。
サバサバしている性格で、物事をはっきりと言ってくれる。
ちなみに、あたしはといえば、ミルクティー色の胸下まである髪に、ごく普通の顔。
いや、凄く童顔な顔・・・。そのうえ身長が低く、よく年齢を間違われる。
だからあたしにとって花音は、凄く憧れの存在なの。
「杏ー、これ超可愛くない!?おそろいで買おうよ~」
そう言って花音が手にとった物は、ヒョウ柄のファー帽子。本当に可愛い!
「ほんとだ!超可愛い~!買う!」
花音はファッションセンスが良すぎる~!
レジで会計を済ませ、2人で店の外に出た。
「杏、いい買い物できたね~」
「ほんと!花音がいいの見つけてくれたから♪」
そんな会話をしながら歩いていると、遠くに友達の樋口愛奈がいた。
愛奈すっごいおしゃれ~!誰といるんだろ?彼氏かなぁ?人がいっぱいいて見えない~!
なんて思っていたら
「杏、あれ愛奈じゃない?」
「うん、あたしも思った!誰といるのかなぁ?」
人が邪魔で背の小さいあたしは全然見えない。
「え?!ちょ、ちょっと杏!あれ蓮斗じゃない?!髪型と髪色蓮斗もあんな感じじゃなかった?」
「え?.....蓮斗?違う...と思う...けど....」
蓮斗のはずないよ、だって蓮斗はあたしの彼氏だよ?......
そんな不安を抱きながら愛奈の方を見た。
―――――――――蓮....斗だ......
目に入る綺麗なブラウン色の髪、あたしとおそろいのクロスモチーフのピアス。
なんで?なんで愛奈といるの?なんで腕組んでるの?
疑問ばかりが生まれてくる。あたしはそこにしゃがみこんでしまった。
「杏、そこの椅子座ってて!あたし、文句言ってくる」
花音は近くにある椅子を指差し、愛奈と蓮斗の方に走って行ってしまった。
おぼつかない足取りで椅子に座った。膝の上に鞄を置き、顔をうずめた。
今のって.....どう見てもデートにしか見えないよね。腕、組んでたもんね。
言われてみれば2人、すごくお似合いだったよね。イケメンな蓮斗と、目がパッチリでお人形みたいな愛奈。あたしより、ずっとお似合いだよね。
でもあらしは蓮斗を信じてるから、泣かない。
泣くのを必死にこらえ、鞄を抱きしめていた。
しばらくして花音が戻ってきた。その目は笑っていなかった。
「杏、落ち着いて聞いてね?.....」
「嫌っ!嫌嫌嫌っ!」
あたしは怖かった。聞きたくなかった。それは、心のどこかで小さな期待をしていたから。蓮斗じゃないって信じていたいから。
そんな抵抗しているあたしの手を花音は力強く握って
「杏、愛奈と蓮斗、付き合ってるんだって。杏には悪いと思ってるって言ってた.....」
我慢していた涙が一気に溢れた。止まらなかった。