蛍色
しばらくして、


「恋~!蛍さん、ご飯できましたよ。」


「は~い!」


「どうぞ。召し上がれ」


「母さん!これ俺の好物ばっか!」


「でしょ。」


恋と義母は仲睦まじく、私の入る隙はなかった。


「あら、蛍さん。あまり食べていないようですけど、お口に合わなくて?」


「あ…いえ。美味しいです」


「なら、いいわ」


痛い。


彼女の言葉一言一言が痛い。


まるで刃物に刺されるかのように。


グサグサ刺さってくる。


早く終わらないかな。


「蛍?大丈夫か?」


「え?だ、大丈夫。」

「そっか…」


恋は本当に優しい。


その優しいさがグッと心にくる。


「蛍さん具合悪いの?」


「朝から顔色が悪かったんだよね。」


「そうなの~。大丈夫かしら?」


「心配だけど、本人が平気って言ってるからさ…。」


「そうね。あっ、恋。ほっぺにご飯粒がついてるわよ!」


「えっ!!こっち?」


「違う!ちょっと動かないで。」


そう言って恋のほっぺについているご飯粒をとった。


「はい。とれたわよ。」


「ありがとう!!母さん!」






私は二人についていけなかった。
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