BLOOD・CONTRACT
『ねー壱子ちゃん』
奏都は壱子に話しかける。
「どうしたの?」
『あそこの木の下にいる男子…体育しないの?』
奏都が指指す方を見て、壱子は奏都の指を降ろさせた。
「あの人は体が弱くて体育は毎回見学なの」
『ふーん』
「すごく素敵な方でしょう?」
壱子の目は確かに彼を見ている。いや、見つめている。
「華魅谷(カミヤ)…桐李(トウリ)…様ってゆうの…」
奏都は思う。
壱子は彼が好きなんだと、そしてやっと見つけたターゲット。
つまり、彼を殺すことが奏都の指名。
『好きなの?』
「えっ…あ…」
少し言いにくそうだが、壱子はゆっくりと口を開いた。
「あの方は妖花…幾人もの女を惑わし、狂わせる…でも男としての欲を女に当てたりしない。」
壱子は静かに空を見上げる。
「心に決めた方がいらっしゃるんですって…」
悲しそうに言う壱子を奏都は慈悲の心では見なかった。
(ごめんね…壱子ちゃん…)
そう、奏都が彼の命を奪うのだから。