赤いスイートピー
初めての彼氏
1982年 ー9月。
夏はとっくに終わったというのに、ツクツクボウシはいつまでも鳴いていた。
「…あのう、すいません。怪しいもんじゃないです。ちょっといいですか?」
私立の女子中学に電車通学している河井チエミは、下校途中、最寄り駅の改札を出たところで、スポーツバッグを持ったブレザー服姿の男の子に話しかけられた。
背が高く、スッキリした面長の顔立ちに愛嬌のある目をしている。
チエミの好みにぴったりなタイプだった。
第一ボタンを外した白いワイシャツに、臙脂のネクタイを緩く締めた涼しげな襟元が印象的だ。
突然、王子様が現れたみたいだった。
「…はい。」
ドキドキしながら、チエミは答える。
「俺、舘野高二年のニシノヒロユキっていいます。そっちは気がついてないかもしれないけど、朝の電車の中とかで、俺はよく見てました。」
人見知りの上、あまり男の子と話したことがないチエミは、どう答えていいのかわからず、じっとヒロユキの顔を見詰めた。
ヒロユキはチエミに見詰められ、緊張したのか、急に顔が真っ赤になる。
一瞬、下を向き、意を決したように言った。
「あの、すげー簡単にいうと、付き合ってほしいんだけど。」
(えっ…!)
いきなりのことで、チエミの顔も真っ赤になった。
「よかったら、ちょっと話さない?
一緒に帰ろうよ。
チエミちゃんの家まで送るよ」
初対面なのに、なぜか名前を知っているので、チエミは驚いた。
すると、それを察したヒロユキは、チエミの通学バッグに付いている名前入りのキーホルダーを指差した。
「俺のこと、超能力者だと思ったでしょ?」
その言葉にチエミはクスッと笑いだし、ヒロユキもホッとしたように笑った。
二人はなんとなく、チエミの家の方へ歩きだす。
ヒロユキがチエミのグレーのブレザーの胸元に付けられた校章を見るなり、目を丸くして驚いた。
「ええっ?キミって中学生!?三年?まじで!?」
チエミは、コクリとうなずく。
「本当?エスカレーター式の私学だって知ってたけど、大人っぽいね。高校生だと思ってたー」
大人っぽいなんて初めて言われたチエミは心の中で驚いた。
夏はとっくに終わったというのに、ツクツクボウシはいつまでも鳴いていた。
「…あのう、すいません。怪しいもんじゃないです。ちょっといいですか?」
私立の女子中学に電車通学している河井チエミは、下校途中、最寄り駅の改札を出たところで、スポーツバッグを持ったブレザー服姿の男の子に話しかけられた。
背が高く、スッキリした面長の顔立ちに愛嬌のある目をしている。
チエミの好みにぴったりなタイプだった。
第一ボタンを外した白いワイシャツに、臙脂のネクタイを緩く締めた涼しげな襟元が印象的だ。
突然、王子様が現れたみたいだった。
「…はい。」
ドキドキしながら、チエミは答える。
「俺、舘野高二年のニシノヒロユキっていいます。そっちは気がついてないかもしれないけど、朝の電車の中とかで、俺はよく見てました。」
人見知りの上、あまり男の子と話したことがないチエミは、どう答えていいのかわからず、じっとヒロユキの顔を見詰めた。
ヒロユキはチエミに見詰められ、緊張したのか、急に顔が真っ赤になる。
一瞬、下を向き、意を決したように言った。
「あの、すげー簡単にいうと、付き合ってほしいんだけど。」
(えっ…!)
いきなりのことで、チエミの顔も真っ赤になった。
「よかったら、ちょっと話さない?
一緒に帰ろうよ。
チエミちゃんの家まで送るよ」
初対面なのに、なぜか名前を知っているので、チエミは驚いた。
すると、それを察したヒロユキは、チエミの通学バッグに付いている名前入りのキーホルダーを指差した。
「俺のこと、超能力者だと思ったでしょ?」
その言葉にチエミはクスッと笑いだし、ヒロユキもホッとしたように笑った。
二人はなんとなく、チエミの家の方へ歩きだす。
ヒロユキがチエミのグレーのブレザーの胸元に付けられた校章を見るなり、目を丸くして驚いた。
「ええっ?キミって中学生!?三年?まじで!?」
チエミは、コクリとうなずく。
「本当?エスカレーター式の私学だって知ってたけど、大人っぽいね。高校生だと思ってたー」
大人っぽいなんて初めて言われたチエミは心の中で驚いた。
< 1 / 28 >