赤いスイートピー
「いつも一人でいるんだね。」
柏田はチエミの方を向いて、微笑んだ。
チエミは柏田が自分のことを見ていたことに驚いた。
週に一度の美術の授業はチエミにとって退屈な時間だった。
いつも適当にやり過ごしていて、注目されることはなかった。
「時間があるんだったら、今度、美術部に遊びにくるといいよ。」
柏田は窓の外を見たままチエミに言った。
美術など全く興味がないチエミはいくわけない、と思った。
「カッシーファンクラブに入れてくれるの?」
チエミは悪戯っぽく言った。
「そんなものないから。」
柏田はにっこり笑って言い、ズボンのポケットに両手を入れたまま、教室の外に向かって歩き出した。
チエミがその背中をみていると、柏田はパッと体ごと振り返り、
「早く帰って。」
と言うと教室を出て行った。
秋も深まった頃、チエミは十六歳の誕生日を迎えた。
学校の休み時間、チエミが雑誌を読んでいると大好きなシンディローパーのLPレコードジャケットの写真が、ゴッホの「星月夜」をコラージュしたのものだという記事を見つけた。
「星月夜」
ヒロユキのスケッチブックにも
「星月夜」の模写があった。
チエミはゴッホの描いた「星月夜」がどんな絵なのか見てみたくなり、放課後、初めて学校の図書室を訪れてみることにした。
放課後の図書室には誰もおらず静まり返っていた。
チエミは壁に貼ってある書架の案内図を頼りにゴッホの画集を探し始めた。
柏田はチエミの方を向いて、微笑んだ。
チエミは柏田が自分のことを見ていたことに驚いた。
週に一度の美術の授業はチエミにとって退屈な時間だった。
いつも適当にやり過ごしていて、注目されることはなかった。
「時間があるんだったら、今度、美術部に遊びにくるといいよ。」
柏田は窓の外を見たままチエミに言った。
美術など全く興味がないチエミはいくわけない、と思った。
「カッシーファンクラブに入れてくれるの?」
チエミは悪戯っぽく言った。
「そんなものないから。」
柏田はにっこり笑って言い、ズボンのポケットに両手を入れたまま、教室の外に向かって歩き出した。
チエミがその背中をみていると、柏田はパッと体ごと振り返り、
「早く帰って。」
と言うと教室を出て行った。
秋も深まった頃、チエミは十六歳の誕生日を迎えた。
学校の休み時間、チエミが雑誌を読んでいると大好きなシンディローパーのLPレコードジャケットの写真が、ゴッホの「星月夜」をコラージュしたのものだという記事を見つけた。
「星月夜」
ヒロユキのスケッチブックにも
「星月夜」の模写があった。
チエミはゴッホの描いた「星月夜」がどんな絵なのか見てみたくなり、放課後、初めて学校の図書室を訪れてみることにした。
放課後の図書室には誰もおらず静まり返っていた。
チエミは壁に貼ってある書架の案内図を頼りにゴッホの画集を探し始めた。