赤いスイートピー
会うようになって一ヶ月ほど経った。
いつものように駅の改札でヒロユキを待っていると、ヒロユキは学生カバンとは別に大きな黒いトートバッグを肩にかけて現れた。
チエミがこれなに?と聞くと、
「スケッチブック。」
照れたように笑って答えた。
「俺、実は美術部なんだ。ずっとさぼってるけど」
「絵を見せて。」チエミが頼むと
「恥ずかしいからヤダ」
ヒロユキは自分の後ろにスケッチブックを隠す仕草をする。
チエミが拗ねると
「じゃあ、公園まで手をつないでくれたら、見せる。」
ヒロユキはそういって右手を差し出した。
チエミがためらいながら手を差し出すとヒロユキはしっかりとその手を握った。
ヒロユキの手は優しく暖かかった。
「やった!」
ヒロユキは学生カバンを持ったまま、左手でガッツポーズを作った。
ヒロユキの笑顔を見ると幸せな気分になる。ふわふわしている気分になる。
この時チエミは自分が「恋」をしていると実感した。
二人で公園のベンチに座り、ヒロユキが
スケッチブックを開く。
そこに描かれた絵は、デッサンだった。
始めのページには、鉛筆で人の手が幾つも描かれていた。
繊細な線が重なることにより、手は命を与えられていた。
「これは俺の左手。一番身近なモデル。」
次のページには、人のシルエットが幾つも描かれていた。
「これは誰?」
「誰でもない。想像の人物。」
静物のデッサン、人物のデッサン、落書きのようなものもあれば、一ページ使って大きく描かれたものもある。
それらはすべて生き生きとした躍動感にあふれていた。
ページをめくるごとにチエミはこれは何?と聞いた。
いつものように駅の改札でヒロユキを待っていると、ヒロユキは学生カバンとは別に大きな黒いトートバッグを肩にかけて現れた。
チエミがこれなに?と聞くと、
「スケッチブック。」
照れたように笑って答えた。
「俺、実は美術部なんだ。ずっとさぼってるけど」
「絵を見せて。」チエミが頼むと
「恥ずかしいからヤダ」
ヒロユキは自分の後ろにスケッチブックを隠す仕草をする。
チエミが拗ねると
「じゃあ、公園まで手をつないでくれたら、見せる。」
ヒロユキはそういって右手を差し出した。
チエミがためらいながら手を差し出すとヒロユキはしっかりとその手を握った。
ヒロユキの手は優しく暖かかった。
「やった!」
ヒロユキは学生カバンを持ったまま、左手でガッツポーズを作った。
ヒロユキの笑顔を見ると幸せな気分になる。ふわふわしている気分になる。
この時チエミは自分が「恋」をしていると実感した。
二人で公園のベンチに座り、ヒロユキが
スケッチブックを開く。
そこに描かれた絵は、デッサンだった。
始めのページには、鉛筆で人の手が幾つも描かれていた。
繊細な線が重なることにより、手は命を与えられていた。
「これは俺の左手。一番身近なモデル。」
次のページには、人のシルエットが幾つも描かれていた。
「これは誰?」
「誰でもない。想像の人物。」
静物のデッサン、人物のデッサン、落書きのようなものもあれば、一ページ使って大きく描かれたものもある。
それらはすべて生き生きとした躍動感にあふれていた。
ページをめくるごとにチエミはこれは何?と聞いた。