とあるバイトの子のとある恋物語
はっきりと、言った。
それから俯いていた顔を上げて。
「伊藤さんです」
初めて見る凛とした表情で、伊藤ちゃんを見据えたまま言った。
好きな人は伊藤さんです、と今、はっきりと伝えた。
「伊藤さんの……彼女候補にしてくださいっ……!」
ぎゅっと目をつぶる藤野ちゃん。
よくやった、藤野ちゃん。よくぞ自分から気持ちを伝えた。
あとは伊藤ちゃんの言葉を待つだけ……。
伊藤ちゃんは、ふっと笑うと。
「じゃあ……俺を藤野さんの彼氏候補にしてください」
伊藤ちゃんが差し出した右手を藤野ちゃんが握る。
と、伊藤ちゃんはそのまま引っ張って、藤野ちゃんを自分の腕の中に収めた。
ヒュー♪
なかなかやるね、伊藤ちゃん。
告白の仕方がちょっと普通じゃなかったたけど、それはそれでふたりらしい。
さてと……邪魔しちゃう前に退散するか。