とあるバイトの子のとある恋物語
俺が後ろから声をかけると、ふたりとも同時に振り返る。
「ふ、夫婦!?」
顔を真っ赤にして慌てる藤野ちゃんとは対照的に。
「よく言われます」
いたずらっぽく笑う伊藤ちゃん。
それに対して、藤野ちゃんは「伊藤さん!?」と、さらに顔を真っ赤にしていく。
伊藤ちゃんのようにさらりとかわせないのか、テンパりすぎてなかなか袋に詰める作業が進まない。
「もう、主任も伊藤さんも何言ってるんですかっ」
口を尖らせながらも、嬉しいのか頬が緩んでいた。
「じゃあ、俺持っていきます」
「あ、私も」
よいしょ、と藤野ちゃんは、たくさん袋を持ってる伊藤ちゃんを気遣い、重い袋をひとつ手にする。
「俺持っていきますから」
だけど伊藤ちゃんは、「大丈夫です」と言い張る藤野ちゃんの袋を奪い取ると車まで行ってしまった。