そらほま!
そらほま!
休日。
俺は待ち望んでいた本の発売日という事で、町で一番大きな本屋さんに来ている。
炎天下の中を歩いてきたのに、汗はあまり出ていない。夏でも冷え症と言う事に変わりは無いらしい。
本屋に入ると同時に涼しい風が顔にあたった。これで長居は出来ない事も決まった。
そうとなればお目当ての本を探し出してさっさと帰ることにした。
(ミステリー…ミステリー…)
何度も頭で言わないとここは本が多いので別の本を手に取ってしまう。
(…あった)
ミステリー小説コーナーに新作!とラベルが貼ってあり残りの一冊が置いてあった。今日はついてるかもなぁと思い、その本に手を伸ばした。
すると横から細くて白い腕が伸びてきてその本に触れた。
「あ」
「あっ」
ソプラノぐらいのの高い声。
良く通る透き通ったような声だった。
彼女の方をみると慌てたように「ごめんなさいごめんなさい」と連発していた。…耳まで真っ赤になってる…
「いいよ。はい」
と本を渡し、退却しようと思ったが彼女は
「でもっ、発売日に本屋さんに来るなんて、ずっと楽しみにしていたんですよねっ?」
「…まぁ。」
そんなことまで分かるのか。すごい人間もいるなぁ。
「でもいいよ。明日来るから。」
「…そう、ですか…」
以外にあっさり諦めてくれた。
彼女は後ろ髪を引かれるように不安な顔をしたあと、軽くお辞儀をしてレジへ向かっていった。
本はまた今度。買いに行こうかな。
「あ………眼鏡…」
休日だからと言って眼鏡をかけるのをすっかり忘れていた。もちろん、彼女の顔も全く見えなかった。
だけど。目の色が綺麗で髪が腰くらいまであったかと……思う。
これが初めての出会いだった。