猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
俺を見る彼女の顔は、予想外に真剣なものだった。
「参ったな……」
「他にもあるのよね?」
「うーん」
「絢士さん」
「うわっ!それ使うのかよ、反則だろ」
近づいてきた彼女に上目使いに見上げられて、絢士はたじろいだ。
「反則でもなんでも教えて欲しいの!」
確かあの日もそうだった。
美桜はこの絵を見たいと会社まで押し掛けてきた。
俺はあの時、誤魔化しきれず絵を見せると約束したんだ。
あの日逆らえなかったこの瞳に、愛してると自覚している今、逆らえる筈がない。
『はあーっ』と絢士は長いため息をついた。
「実はこの画家の絵はほとんど持っていると思うよ」
「どういう事?!なぜ黙っていたの?!」
美桜の眉が上がって瞳に厳しい光を宿している
怒ったのか?何故?
「美桜、ちょっと落ち着け」
「もしかして……絢士さん、初めからうちの絵が目的だったの?!」
「それは違う!!」
「でも絢士さんあの絵が売り物じゃないって、わかっていたし……う、嘘だったの?あなた本当は………」