猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
陽人の思いやり
絢士の実家を出た美桜は通りでタクシーをひろうと、陽人の研究室がある大学へ向かった。
陽人は曜日に関係なく大抵はそこにいる。
絢士もよく言っているが、きちんと身なりを整えたら蓮にも劣らないイケメンなのに、残念なことに陽人の興味はそこにない。
でもずっと密かに思っている事がある
ただの面倒臭がりに見えるちょっとヨレた感じは、妹でなければ母性本能を擽られる感じだし、白衣に眼鏡は知性的な陽人の魅力を最大限に生かしているんじゃないかって。
現に、陽人の周りにはいつも年上の女性がいるし。
「おっ!姫、久しぶりだな」
「姫じゃありません、美桜です」
陽人と高校から付き合いのある同僚の高塔(たかとう)さんは、その熊のような体格と顔に似合わず小動物を愛する優しい男性。
何度言っても、美桜を姫と呼ぶのをやめてくれない所以外は好感を持っている。
「グッドタイミング!今、買い出しに行こうとしてたんだ」
気のあう二人は、夢中になると周りが見えなくなる性格だが、高塔さん曰く陽人は天才だそう。
「また何も食べてないんですか?!」
「ちょっと面白い感じになってさ。陽人はまだ動くつもりがないみたいだ」
そう言う高塔さんのお腹がグーっと鳴った。
「まったく……」
美桜は鞄の中からさっき売店で買った板チョコレートを二枚出した。
「さすが姫。んじゃ奴は姫に任せて俺は食堂に行ってくるよ」
サンキュって板チョコを一枚受け取った高塔さんを見送って、美桜は陽人の部屋に入った。