猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「ん!」
顕微鏡から顔をあげた陽人が手を出した。
美桜はその手にチョコレートを乗せる。
「喧嘩したのか?」
「え?」
店から奪ったおこりんぼ達が、陽人の机の上で陽人を睨むように並んでいる。
口いっぱいにチョコレートを頬張った陽人は、隣の椅子をひいて美桜に座るように促した。
「高塔が監視者だってさ」
えっと……最初の質問は恐らく私と絢士さんの事で、
監視者っていうのは見ていたおこりんぼの事を言ったのね。
陽人を理解するのは慣れている。
「喧嘩はしてないわよ」
「あ、そ。これしかない」
陽人はよろよろと立ち上がって、研究室の冷蔵庫を開けると、パックの野菜ジュース出して自分は一気飲みしてから、もう一つを美桜に渡した。
「んじゃ何?絢士やっぱり怖じ気づいた?」
「どうしてそうなるのよ」
「だってそういう事だったんだろ?絢士が兄貴に宣戦布告したのって。おまえがここへきたって、俺は兄貴側だからな」
「宣戦布告?蓮はそんな事言ってたの?!まったく兄って人たちは……」
美桜は自分の頭の中を整理するように、絢士の実家の出来事を陽人に話した。