猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「で?絢士じゃ不安になったと?」
まさか!
絢士さんでいいか不安になんてならないわ!
「そうじゃないの、あのね…、」
ここからが、ここへきた本番だ。
高鳴る心臓を落ち着けて、美桜は猫の絵を見たこと、そこからさっき頭の中に浮かんだ【もしかして…】を 説明した。
「なるほど。だけど、それ違うな」
陽人の断言に納得できなくて、美桜はパソコンに向かう兄の回転椅子を自分の方へぐるっと回した。
「どうして?」
美桜は絢士とやり取りをしているうちに、
作品の殆んどを持っていること、
本人しか知り得ない猫の絵が四部作なこと、
うちの猫の絵の持ち主にこだわっていること、
……から考えて【もしかして…】絢士の母親、つまりみゆきさんが、あやのさんではないかという結論に達したのだ。
画家がペンネームを使うのは普通で、そのペンネームと息子の名前が共通しているのだから、核心な気がして当たり前だ。
この世にいないのは、画家あやのさんで本当のあやのさんは実在しているのではないだろうか?!
そう思い当たったらここへ向かってしまった。
陽人はいつも正しい答えをくれるし、深く詮索しない。
「あやのさんは亡くなってるよ」
「どうして陽人が言い切れるのよ?!」
「志都果(しずか)さんが断言してた」
志都果さんて、あの絵を嫌っていた日向のお母さん?!