猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「えっ?志都果さんが何で?」
「あの猫の絵、元々お母さんが大好きだっただろ?」
美桜はちくっとする胸の痛みを押さえてうなずいた。
母はあの絵が好きで東堂のお屋敷に遊びに行く度に、良く眺めていた。
美桜の頭を撫でて陽人は少し寂しそうな笑顔をした。
「実はさ、あの旅行…、お祝いにしたくてあやのさんの絵を探したんだ」
「え?」
あの旅行って言うのは両親が飛行機事故にあった二人の結婚記念日旅行。
「でもどうしても見つからなくて、志都果さんに聞いてみたら言い切ってた『どこにもないわよ』って」
「そうだったの。でもどうして志都果さんに?
東堂のおじ様に聞けば……」
「俺だってあの猫の絵が東堂のおじさまにとってどんなものか気づいてたさ。それに志都果さんは何か知ってるって何となく思ってた」
「何となく?」
「昔、志都果があの絵の前で泣いてたのが印象的だったから」
「泣いてた?!志都果さんが?」
いつでも明るくて元気な印象の日向の母が泣いた所など美桜は見たことない。
「いつのこと?」
「ずっと前、子供の頃だよ。ごめんなさいって泣く志都果さんをお母さんが慰めてた」
「ちょっと待って」
美桜はこめかみを押さえた。