猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
美桜は志都果さんの事を知らなさ過ぎる気がしてきた。
おじさまとの離婚原因があの絵とか、作者のあやのさんを知っているとか。
志都果さんと母は幼い頃からの親友だった。
だから私たち兄妹にも母と同じように名前で呼ぶよう幼い頃から躾られた。
東堂のおじさまとはいわゆる政略結婚だったけど、二人は仲が良かったから特に結婚に不満があるようには見えなかった。
だから離婚した時も本当に驚いたんだけど。
「絢士の母親はあやのさんと近い関係だったんじゃないか?親戚とか身内?」
「あやのさんに身内はいない、っておじさまは言ってたわ」
お店を任されて直ぐに美桜も別の絵が見たくて、東堂に『身内の方を当たってみたら』って言ったら、彼女には家族がいないって首を振ってた。
「じゃあ親友みたいなやつ」
「それはあるかも……」
でもそんな人をおじさまが知らないって、おかしい気がする。
正直に言うと、おじさまはあやのさんを愛していたはずだ。そうでなければあんな甘く切ない顔であの絵を見られない。
だからこそ志都果さんともあっさり離婚したんじゃないかしら?
「志都果さんは確か……」
「ハワイに行く前にやることがあるだろ」
そう、ハワイ!
確か先週、日向が言ってた。
「私、行くなんて……」
「何年おまえの兄をやってると思ってる?おまえの思い立ったら即行動っていう性格は百も承知だ」
「別にわる……」
「美桜!冷静になれよ!」
美桜の言葉を遮って珍しく怒鳴る陽人に、美桜はおとなしく『ごめんなさい』と小さい声で謝った。